酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

盤上の敵 講談社文庫

北村 薫 (ASIN:4062735636)
主人公の男性が帰宅すると、自宅に殺人犯が猟銃を持って籠城していた。しかも妻を人質にして。心優しい日常の謎に取り組む作品が多い北村氏が書いた、人間の「悪意」を巡る本格ストーリーです。ハードカバー出版時に、今までのファンの一部の方から「傷ついた」という感想が寄せられたせいなのか、この文庫本の最初には「今物語によって慰めを得たり、安らかな心を得たいという方には、このお話は不向きです」という異例の断り書きが入っています。
実際途中ページをめくるのが辛くなる箇所もあります、それはあからさまな残酷な描写のためではなく、それを見ている、あるいは報告している人の心の動きが、痛みや悪意に満ちていることがわかるからなのです。作者の恐るべき手腕といわなければなりません。
誰にでもお勧めすることはできないのですが、それでも多くの人々に受け入れてもらいたい作品だと思いました。