パオロ・マッツァリーノ (ASIN:4872574605)
何気なく読み始めたら、滅茶苦茶面白くて一気に読み終わりました。この本は「社会学」の本なのですが、通常の「社会学」のいかがわしさ、そしてそこから導き出される「結論」を、強烈なおちょくりでことごとくゴミ箱に放り込んでくれます。
たとえばときどき指摘されていることですが、少年の凶悪犯罪はここ10年のスケールでみると増加傾向にあるものの、実は過去50年を振り返ると、激減しているということがちゃんとした「政府の統計」からも明らかなのです。ところが一般的なマスコミの論調は「若者の凶悪化が進んでいる、昔は良かった」の大合唱です。
これは私の個人的な観察でもあるのですが、世の中で一番キレやすいのは60歳前後の男性なのではないかと思っていました。以下はトリビアルな例なのですが、個人的な体験として、こんなことがありました。
少し前の出来事です。JR町田駅のみどりの窓口で特急券を買おうとしていた私は、特急券申し込み用紙を記入する机に歩み寄りました。そこでは60歳絡みの男性が記入中。さてその机の上には何冊か時刻表も置いてあります。誰も使っていない時刻表に私が手を伸ばすと、急にその男性が「俺が先にここで書き込みしてるんだから、その時刻表は俺に使う権利がある。勝手に使うな」とのたまわれました。見かけは立派な紳士風の人だったんですけどねぇ(タメイキ)。
またたとえばJR東日本の統計では1998年度からの4年間で駅員に一番暴力を働いているのは50代の男性なのです。過去の犯罪統計を見ると凶悪少年犯罪(殺人、強盗、放火、強姦)のピークは昭和35年で、近年もっとも少なかった平成2年との差は7倍もあります(もちろん昭和35年の方が多い)。このように、このとき17歳だった少年は平成16年現在61歳の皆さんということになりますね(笑)。そういえば、この世代の皆様は教育勅語の影響を受けて育っているはずですよねぇ、なにやら最近政治家の方にも「教育勅語復活」を口にする方がいらっしゃるようですが、実は何の役にも立っていなかったのではないでしょうか(笑)。ま、冗談はともあれ。
他にも、フリーターの増加や少子化などといった、「社会問題」にも一つ一つデータを積み上げながら地道に反論していきます。一部筆が走りすぎかと思われるところもありますが、そこはこの本そのものが提唱する「批判精神」をもって臨めばよいでしょう。
全体におちゃらけた感じの文体ですし、きっとここに書かれているようなことを言われると烈火のごとく怒り出すお役人や学者の方も多かろうとおもいますが(お気の毒です)、しかし事実は事実として認めなければならないでしょう。
段々書いていて気が重くなって来ました(苦笑)。