酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

覆面作家の愛の歌 角川文庫

北村薫 (ASIN:404343202X)
ということで「覆面作家」シリーズ第2巻を読みました。内容の面白さは相変わらずです。
北村氏の作品の特徴の一つは、登場人物たちが確かに「生きている」ことにあると思いました。これは単なる比喩ではなく、時間軸にそって登場人物たちが「成長」(あるいは変化)していくことが丁寧に書き込まれていることから、あたかも登場人物たちが固有の時間の中を生きているような気持ちになるからです。このため作品の順序を入れ替えて読むと、たとえ明示的な時間の提示がなくても違和感を感じるようになっていると思います。
たとえば登場人物の間の「距離感」もそうとはっきりわからないうちに、少しずつ変化しており、時間軸にそって眺めてみると、それらがジグゾーパズルのピースのようにぴたりとはまっていることがわかります。