酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

"run the gamut" とドレミの起源

Tunnel

run the gamut

  • to include the whole range of possible things within a group or type
  • あるグループもしくはタイプの中で可能なもの全てを含むこと

例:Their projects run the gamut from mobile homes to luxury condos.

「彼らのプロジェクトは移動式住居から豪奢なコンドミニアムまで、全てのものをカバーしている」

引用:run the gamut Meaning in the Cambridge English Dictionary

 

"run the gamut" は「全てのものを含む」というイディオムになります。ところで gamut とは何でしょうか?

 

これはもともと音楽用語で「全音階」という意味を持つようです。そこから転じて「全範囲」「全域」という意味になったようですね。

引用: gamut - Wiktionary

 

ということで

"run the gamut from A to B"

という表現は、上に書いたように

「AからBまで全て含む」

というものになるようです。

 

なお

" I've run the gamut. "

という表現は

「私は全力を尽くしました」

という意味になります。

 

ところで上の Wikitionary の記述を読むと気になることが書いてありました。

1520s, original sense “lowest note of musical scale”, from Medieval Latin gamma ut, from gamma (Greek letter, corresponding to the musical note G) + ut (first solfège syllable, now replaced by do). In modern terms, “G do” – the first note of the G scale. Meaning later extended to mean all the notes of a scale, and then more generally any complete range.

これによると gamut というのは、もともとはラテン語で「最も低い音」を意味する "gamma ut" だったということです。なおこの "ut" は、発音しにくいということで、後に "do" (ドレミの「ド」)になりました。最初はこのように1音だけを表していたのが、やがて全ての音を表すようになったというのがここに書いてある説明です。

 

ではなぜ ut が(今では)「ド」に相当する音階なのかというと、これは

10世紀にできた「聖ヨハネ賛歌」というものに基づいているそうです。

Ut queant laxis - Wikipedia

 

その歌詞は以下のようなものですが ...

 

Ut queant laxis
Resonare fibris
Mira gestorum
Famuli tuorum
Solve polluti
Labii reatum
Sancte Johannes

 

上記Wikipediaに掲載されている楽譜と合わせてみると、それぞれの行の頭が

 

Ut, Re, Mi, Fa, Sol, La

になっていて、これがいわゆる

ドレミファソラ

の音名に対応しているいることがわかります(このときはまだ ド は Ut)。

 

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(大意)
あなたの僕(しもべ)が
声をあげて
あなたの行いの奇跡を
響かせることができるように
私たちのけがれた唇から
罪を拭い去ってください
ヨハネ様。

 

上記翻訳引用:聖ヨハネ賛歌 - Wikipedia

 

最初の段階(中世の6音階)では ド〜ラ しかなかったのですが、次の音(今で言う「シ」)をどうしようということになったときに、上の歌の最後の行の

Sancte Johannes (聖ヨハネ

から SJ を取り出し、それが SI に変化して「シ」になったという話が上の Wikipedia の中に書かれています(楽譜の上での音程は対応していませんが)。これで

ドレミファソラシ

が完成したということですね。

 

ということで軽い気持ちで調べ始めた gamut がずいぶん長くなってしまいました。