酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

計画と無計画のあいだ---「自由が丘のほがらかな出版社」の話

明けましておめでとうございます。
ほとんどブログを更新しなかった 2012年を反省し、2012 年はもう少しマメに本の紹介をしていきたいと思います。

2012 年一冊目にご紹介したいのが、この本「計画と無計画のあいだ---「自由が丘のほがらかな出版社」の話」です。
本書は自由が丘のほがらかな出版社を標榜するミシマ社の社長さんによる、現在進行形の起業ストーリー本です。しかし起業ノウハウ本では全くありません。むしろこのままミシマ社の「やり方」を参考にして起業したら十中八九は失敗しそうです(笑)。読み取るべきは「なぜ」起業したのかの部分であって、「どのように」起業したのかはあまり参考になりません。しかしその「なぜ」の部分がかけがえのない価値なのです。

ひと言でいえば、著者三島さんが語る「本と仕事を通して世界に関わる熱意と決意」に満ち溢れた大変面白い本なのです。

個人的にはミシマ社の本は、既に「街場の教育論」などを読んでいたのですが、迂闊なことに出版社そのものにはあまり注目していませんでした。この本を読めば感じることができますが「つくる(出版社)・送る(流通)・届ける(書店)」の全ての段階で「熱を失わないようにしたい」と願い行動する三島さんの語り口が、読者も含め関わる人の多くに熱気を伝えその輪を広げて行っているように思えました。

最近多くのメディアでミシマ社が「こんな会社で働きたい」という文脈で取り上げられることが多くなっている理由がわかる気がします。私が本書から読み取った一番大切なメッセージは「ミシマ社はこんないい会社、ミシマ社で働きたい人を増やしたい」ではなくて、「ミシマ社のような風通しの良い(もちろん苦労も多いけれど)会社/組織を沢山のひとに生み出して欲しい」ということでした。

これから就職を考える若い人だけではなく、社会に出て一通りの仕事に「慣れ」てしまった人たちにこそ読んで欲しいと思う本です。