酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

トロイメライ

トロイメライ

トロイメライ

待望のシマトラ3作目が出ました*1
今回は20世紀初頭に高温多湿でピアノの音が狂いやすい東南アジア植民地向けに、大量生産されたヴァルファールトというピアノ(もちろん、島田虎之介の創出による架空のものですが)の修理を巡る物語です。
基本的に島田虎之介氏の作品は、大きく広げられた複数のホラ話を小さなエピソードの積み重ねで断片的に描きながら、最後はそれぞれの物語が一つの時点で奇跡のように交差し、また互いに離れて行くというスタイルをとるものですが、本作品も20世紀初頭のアフリカ、1965年ジャカルタ、1980年代後半のイラン、イラク国境で始まった物語が2002年ワールドカップに湧く日本で一台のピアノの元に引き寄せられる過程が鮮やかに描かれています。
ヴァルファールトは「巡礼」という意味だそうですが、その商品コピーが「ベヒシュタインより安く、機関車より頑丈」というものだったというのもくすぐりとして効いています(笑)。

なお過去の2冊は以下の通りです。

ラスト.ワルツ―Secret story tour

ラスト.ワルツ―Secret story tour

過去の感想 >> ラスト.ワルツ - 身辺雑記 - ardbeg1958
東京命日

東京命日

過去の感想 >> 東京命日 - 身辺雑記 - ardbeg1958

もしこの本を読んでピアノという楽器に興味を持ったら、以下の本も一緒にいかがでしょうか。私はピアノ弾きではありませんが、そういう人でもピアノという一人オーケストラ楽器の魅力を十分に堪能できる本だと思います。あるいはこれらの本を先に読んでおくと、トロイメライに出てくる、ベヒシュタインとかスタインウェイといったピアノの位置付けや、音楽にとっての意味がより分りやすくなり、より楽しめることと思います。

パリ左岸のピアノ工房 (新潮クレスト・ブックス)

パリ左岸のピアノ工房 (新潮クレスト・ブックス)

過去の感想 >> パリ左岸のピアノ工房 - 身辺雑記 - ardbeg1958
ピアノはなぜ黒いのか (幻冬舎新書)

ピアノはなぜ黒いのか (幻冬舎新書)

過去の感想 >> 済みませんまだ書いていません。でも良い本です。

なお、「ピアノ絡み」では更に最近手に入れた

ピアニストガイド

ピアニストガイド

という本が、やはり音楽素人にもとても興味深いものでした。この本の感想はまたいつかご紹介します。

*1:やはり前作から2年かかりましたね