酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

リストランテ・パラディーゾ

リストランテ・パラディーゾ (f×COMICS)

リストランテ・パラディーゾ (f×COMICS)

三日連続でオノナツメのコミックを紹介しました。実は一番最初に読んだのがこれです。

リストランテ・パラディーゾに若い娘が訪ねて来ます。このリストランテのオーナーの妻はこの娘の母親なのですが、かつて再婚の邪魔になるという理由で娘を実家に置き去りにしました。娘は都会に出てくるという目的と母親の現在の夫であるリストランテのオーナーに自分の正体をバラして母親を困らせてやろうという二つの目的をもって田舎からやってきたのです。
しかしまあそこは「おはなし」なので、母親にうまく言いくるめられた娘はリストランテで働くようになり、そこで働く老眼鏡の紳士ウェイターたちや、母親、取り巻きの人々との交流を通して新しい「関係」を見いだして行きます。

今回ご紹介した三冊のもののなかでは、一番「おとぎ話」的であると思います*1。しかし共通して流れるのは「言葉にならない思い」「ちょっとした気遣い」そして「一つに割り切れない答え」といったテーマです。そして「考え続けること」だけが私たちの頭を上げて前を向かせてくれることをそっと語りかけてくるような内容だと思います。

もともとオノナツメというひとは Basso というペンネームでBL(ボーイズラブ)系の作品を発表している人でもあるようですが、こうした「気遣いの世界」は、同様に BL 系の作品の多い「よしながふみ」に、似たものであるような気もします。

*1:そもそも老眼鏡の紳士しか雇わないお店という時点でファンタジーですね