- 作者: 八柏龍紀
- 出版社/メーカー: ベストセラーズ
- 発売日: 2005/12
- メディア: 新書
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さて、この本が指摘する問題は、私たちの「感情」をどのように捉えるかという問題に直結しています。著者は現在の日本に横溢する「泣かせて欲しい」「感動させて欲しい」という雰囲気に違和感を覚え、それを一歩引いた目で1970頃からの「感性の商品化」の歴史を辿りながら検証して行こうとします。
世の中にこうも「感動の小ネタ」が溢れているのは何故か、それはお手軽に味わえる「感動」をパッケージとして売り込むことによって、拡大を図ってきた資本主義の宿命である、と捉えつつ、著者は感性と感動のビジネスの構造を浮き上がらせようと努力しています。
ある事象を見たときに「感動」するのは、もともとは受け手の感性によるものに関わらず(すなわち同じものを見てもツボが異なり、ある者は感動するが、他のものは感動しないことは十分あり得る)、現在の世の中に溢れるパッケージングでは、しばしば事象そのものが「本質的に感動的」であるということが大声で宣伝され、それに対して「いや・・・それほどでも」という態度を示すと「ノリ」が悪いと言われ、最悪バッシングの対象にすらなりかねない現代の状況に息苦しさや違和感を覚えている人は、本書を読むと面白いかもしれません。