酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

その日のまえに

その日のまえに

その日のまえに

短編集ですが、それぞれのなかで「その日(病を得て死を迎える日)」を待つ人々の思いが綴られます。一見無関係なそれぞれの作品が最後には絡み合い、長い余韻を残します。
ただ…この作品集そのものにとりたてての不満があるわけではないのですが、この作品に描かれたような、「あらかじめ予想されている死」を待てるというのは、覚悟を決める時間があるだけまだまだましなのかなと思いました。
一番辛いのは、心の準備が何もないときに不意に訪れる「死」。事故だったり、急病だったり。残された者はわけのわからないまま絶壁から押し出され、運命の皮肉に翻弄されることになります。
私事ですが、つい最近、大学時代の同級生が、突然の事故により御家族(奥様と、小学生のお子様二人)ともども亡くなりました。残された親しい方々の心情を思うと、葬儀の場では何も言う事ができませんでした。
また、こうしたことをここに書くのは適切ではないのかもしれませんが、友人代表の弔辞の中に「(同級生とその奥様の)ご両親に、このような素晴らしい人たちをこの世に送り出していただいたことに、深く感謝したいと思います」という言葉があり、人の優しさを感じるとともに、そのやるせなさが心に沁みました。