酔眼漂流読書日記

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魔法の発音 カタカナ英語

魔法の発音 カタカナ英語

魔法の発音 カタカナ英語

気鋭の脳研究者、池谷氏の書いた「通じる英会話本」です。この本の眼目は

そもそも子供の頃日本語だけで育った日本人には、英語の音は聞くのも話すのも苦手である、ゆえにカタカナ発音になるのも仕方がない、しかし現在の一般カタカナ表記では、英語らしく聞こえることはない、それこそが問題である。では通じる『カタカナ発音』とはどのようなものか

というものです。大人になって自分の発音が悪いのではないかと悩む大人には朗報ですね(笑)。
皆さんも「掘った芋いじるな」が英語としては "What time is it now?" と聞こえると話を聞いたことがあるのではないでしょうか。この例ではたまたま日本語の方も意味のある文となっている面白い例ですが、たとえ日本語としての意味がなくても素直なカタカナ発音でも言い方によって十分ネイティブに通じるケースは多々あります。
この本は、こうしたフレーズ例のオンパレードなのですが、科学者らしく理論的な分析もなされていて興味深いものです。
収録されているフレーズとしては、

ダーツナーツワライメンッ → That's not what I meant.
クジュテウミ ダウェイトゥダ パスタフェス → Could you tell me the way to the post office?

などなど。もちろん例文をただ眺めるだけでは、応用度は低いので、実際に練習したり本の後半にある対応表などを見てお勉強することが期待されています。効用はすべてアメリカの勤務先の英語ネイティブの人たちの折り紙つきだそうです。
ではここでクイズ、以下のようなカタカナ発音は、ネイティブにはどのように聞こえるでしょうか?

ハスペロウ、エアーポウ、クリーヌン、テケッ(t)、ダーッ(g)、マンケ、ペクチョ、エラレ、カンピューロ、キェッン

答えはそれぞれ

hospital, apple, cleaning, ticket, dog, monkey, picture, Italy, computer, kitten

です。
なお、私も昔自分の英語の発音がカタカナ英語だな〜と少し悩んでいたことがありますが、カーネギーメロン大学の日本人学者T先生の、中身の詰まった堂々としたカタカナ英語を会議で聞いてからは、「カッコいい発音よりは内容だ」と開き直ることにして、一気に楽になりました(笑)。幾つかのコツとリエゾン(単語と単語のつながりによる変化)の発音の部分そしてなによりも文脈(コンテキスト)に気をつければ、発音そのものはカタカナ的でも十分通じるものです。
このように大変面白い本なのですが、まあ、あくまでも30歳を過ぎた忙しい大人たちの緊急避難本として捉えた方が良いでしょう。
これから学習する子供たち、若い人たちは、もっと素直に耳で聞く英語に素直に身を任せるべきでしょうね。